憲法第21条2項に規定されている「検閲」とは

北京冬季オリンピックのニュースから

2022年、北京冬季オリンピックで参加者が使用しているアプリで、データ漏えいにつながるセキュリティー面での弱点があると指摘され、「検閲」の懸念があるようです。

今回の北京冬季オリンピックに限らず、中華人民共和国では普段からインターネットに対して地方政府、インターネットサービスプロバイダ、インターネット企業などが「検閲」を実施しているようです。

日本国内では日本国憲法で、検閲は、絶対的に禁止されています。

「検閲(けんえつ)」って何?

「検閲」とはどう言う行為のことを言うのでしょうか。

「検閲」は、憲法第21条2項に規定されている「表現の自由」に関する問題です。

憲法第21条2項には、

「検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。」

と定められています。

行政書士試験科目でもある憲法の条文ですが、一見するとよくがわからないと思った方も多いかと思います。

この規定だけでは、何がどこまで検閲に当たるのかがはっきりせず、問題となっていました。

「検閲」の定義

税関検査事件における判例(最大判昭59.12.12)で、「検閲」の定義について示されました。

「検閲」とは、

  1. 行政権が主体となって、
  2. 思想内容等の表現物を対象とし、
  3. 表現物の一部または全部の発表を禁止する目的で、
  4. 対象とされる表現物を一般的・網羅的に、
  5. 発表前に審査した上、
  6. 不適当と認めるものの発表を禁止すること

をいうとされています(狭義説)。

「事前抑制」との違い

「検閲」に似た概念として、「事前抑制」という用語があります。

「事前抑制」というのは、表現行為に先立って公権力(行政権、司法権等)がその抑制をするというもので、検閲よりも広い概念と考えられています(広義説)。

事実上の抑止的効果が働き、表現活動を萎縮してしまうおそれがある等の理由から、事前抑制も禁止されるべきとされています。

しかし、検閲のように絶対的禁止とまではされていませんので、例外的に認められる場合もあります。

「事前抑制」禁止の根拠条文は、憲法第21条1項にあります。

「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」

検閲と事前抑制に関する重要判例

税関検査事件(最大判昭59.12.12)

北方ジャーナル事件(最判昭和61.6.11)

第一次家永教科書事件(最判平成5.3.16)

これらの判例が有名で、行政書士試験でも繰り返し出題されていますね。

まとめ

日本国内では日本国憲法で、検閲は絶対的に禁止されているので、「表現の自由」が保障されているのです。

Twitterでつぶやくことが出来るのも、こうしてブログを自由に書けるのも、「表現の自由」が保障されているおかげですね。

煙山 光宏

1970年生まれ。
フソウ開発工業株式会社の2代目社長で、
ジッピー行政書士事務所の代表行政書士です。